【最新】 欧州新車販売台数の4分の1(300万台)が消滅

Electrification

本日、欧州自動車工業会(ACEA)は、乗用車における2020年の年間新車販売台数統計を発表しました。(リリースはこちら)
この記事では、コロナによって大打撃を受けた欧州自動車業界の足元の状況を解説するとともに、各国の状況(特にドイツの状況)について紹介したいと思います。

【資料】ACEA発表資料より引用

結論:年間販売台数の4分の1(300万台)が消滅 !!

今回発表された主なポイント

  • EU27カ国における2020年乗用車登録台数は、前年比-23.7%の990万台で着地
  • 2019年の年間新車販売台数1300万台に対して、約300万台の減少(これは統計開始以来最大の減少幅
  • 国別では、スペイン(‐32.3%)、イタリア(-27.9%)、フランス(-25.5%)と平均より下げ幅が大きい一方、最大市場のドイツは、(-19.1%)に留まった
  • ちなみに、EU27カ国に含まれていないUKも2020年暦年では(-29.4%)とスペインに次いでかなりの下げ幅を記録
  • 12月単月で見ても、ドイツは昨年同月比+9.9%とプラスを記録、他の主要国であるイタリア(-14.9)、フランス(-11.8%)、UK(-10.9%)とは反対の状況(EU27カ国平均は-3.3%)

日米欧中の状況は?

欧州自動車工業会(ACEA)のこの発表により、日米欧中における2020年の年間新車販売台数が出揃った事になります。表にまとめると、以下の通りです。


【資料】筆者独自作成

ご覧の通り、日本が1割強の減少幅で留まる中、米国も欧州同様にコロナの影響を強く受けている地域の一つですが、15%減で留まっており、際立って、欧州の下げ幅が大きい事が良く分かると思います。

上記ACEAの月次グラフを見ても分かる通り、特に2020年3月~5月の3か月間は、コロナによる販売ディーラーの営業制限や人々の外出制限が広がったことが影響し、欧州において前年同月比で約半減、4月に至っては、-76%という記録的な月となりました。
一方、中国は-2%と、コロナの早期抑え込みと、経済の急回復とともに販売が押し上げられ対照的なデータとなりました。

欧州最大市場のドイツは何故、そこまで落ちなかったのか?

上述の通り、欧州主要国は軒並み前年比で-25%以上の下げ幅となったものの、欧州最大市場のドイツは、-19%に留まる事ができました。
その要因はどこにあるのか?もちろんコロナの感染者数などスペイン、イタリア、フランスなどと比べ、ドイツは比較的これまで抑えられてきた経緯は大きいかと思いますが、その他の要因について少し深堀りしていきたいと思います。

上げられる要因はいくつかあると思いますが、以下のように整理できるのではないでしょうか?

ドイツの下げ幅が他の主要国よりも小幅に留まった主な要因

  • コロナに伴う一連の新車購入補助金制度:EV・PHEVの新車購入に対して最大9000€の補助(日本円で約110万円)
  • 付加価値税(日本でいう消費税)を昨年12 月末までの時限措置として引き下げていたため、年末にかけての駆け込み需要
  • VWのEV(I.D3)など、電動車の新車投入時期が重なった事(EV新車販売台数は前年比3.1倍の19.5万台:シェア6.7%)
  • 加えて、ドイツ勢(特にBMW)が得意としているPHEV(プラグインハイブリッド車)の販売急増が寄与(PHEVは、前年比4.4倍の20万台を記録:シェア6.7%)

加えて、今回発表されたACEAの統計データには、各メーカー別の販売台数も同時に発表になっており、下記表を見て頂くと分かるように、赤線で囲われたドイツ勢メーカーより、青線で囲われたフランス・イタリア系メーカーの販売縮小幅が大きい事がわかります。


【資料】ACEA資料より筆者作成

このように、ドイツ勢は、政府からの資金面での支援を受けながら、他国の自動車メーカーと比べると特にVWを筆頭に、大きく電動化へのシフトを加速させています。(2020年11月13日:関連記事参照

ドイツ政府は昨年11月、自国の屋台骨でもある自動車産業界に対し50億€(日本円で6200億円規模)もの支援をする事を発表しており、上述のEV・PHEVに対する新車購入補助金も当初は21年までであったところ25年まで延長する事を決定し、加えて、大型車に対する購入補助金や電動車に対するインフラ整備支援を実施する事を公約しております。

今後の欧州自動車産業界の行方は?

正直、年間販売台数の4分1が消滅したこの事実は衝撃的でもあり、例えば、自動車工場の組み立てライン4本のうち1本は全く稼働していない。
従業員400人のうち100人は仕事がない。など、単純計算ではなかなかできないと思いますが、イメージはこのような感じだと思います。

そんな中、世の中は脱炭素社会、カーボンニュートラル、脱ガソリン車などの言葉が頻繁に飛び交い、自動車産業の大変革期をまさに今迎えている状況です。
コロナでダメージを喰らった企業も、まさに、会社存続のための崖っぷちの判断を強いられている状況で、またそこに追い打ちをかけるように、世界一厳しいとされる欧州CO2規制が今年本格的に適用され、基準に満たない場合は多額の罰金が想定されており、ダブルパンチどころかトリプルパンチ的な打撃を各社は受けている状況かと思います。

今後加速する自動運転や自動車のシェアリングなど、自動車の絶対数が特に都市部を中心に減少に転じると言われている中で、年間販売台数1300万台という2019年の数字を奪還する事は、筆者個人の感覚では正直厳しいと言わざるを得ません。
自動車メーカー各社は、今抱えている雇用をどうしていくのか(2020年11月16日:関連記事)、電動化への設備投資・研究開発費投入、電動化シフトに見合った社員への教育、職能技術の底上げ、デジタル分野の新規採用、他社との合併などなど、解決すべき課題は山積です。

2021年もまた激動の年となりそうです。果たしてどうなっていくのか注目したいですね。

本日もご覧頂きまして有難うございました。
今後も有益な情報を発信していきますので、もし今回の記事を評価頂きましたらSNS等でシェア頂けますと幸いです。

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