【最新】e-fuelの義務化に向けた法案を可決(ドイツ)

Climate neutrality

2050年のカーボンニュートラル達成に向け、
特に自動車などの輸送セクターにおける
移行期対策として重要視されている
‘“e-fuel”などのRenewable燃料、Low-carbon燃料。

ドイツの連邦政府は先週2/3、
これらRenewable燃料(再生可能燃料)、および
Low-carbon燃料(低炭素燃料)の供給義務化に
向けた法案を可決したという興味深いニュースが
ありましたので、本日はこの話題を深堀りします。

(e-fuelの解説は、2020年12月23日記事参照

可決された法案の中身とは?

今回、ドイツ連邦政府が採択した法案は、以下の通りです。
(ドイツ政府のプレスリリースはこちら。ドイツ語のみ)

【資料】ドイツ運輸省リリースから抜粋

今回設定された一番重要な規定としては、
燃料供給事業者(いわゆる燃料製造メーカー)への
義務として、供給する燃料からのCO2排出量を
以下の日程に沿って、段階的に削減するということです。
上の表で言うと、一番上の行です。

  • 2021年まで:-6%
  • 2026年まで:-10%
  • 2028年まで:-14.5%
  • 2030年まで:-22%

ようするに、年間100万tの燃料を製造供給する
X社という燃料メーカーがいるとして、
そのうち、今年中(2021年)には、全体の6%を
完全に再エネ由来の例えばe-fuelや、グリーン水素、
電気などに置き換えるか、

もしくは、e-fuelやバイオ燃料などを既存の
ガソリン・ディーゼル燃料にある程度混ぜて精製し、
全体のCO2排出量を抑えるなどの措置が
必要になってくるという事です。

現実的には、e-fuelの実用化はまだ先と考えられ
ているため、目先の対策としては、バイオ燃料や
電気供給などをうまく使ってこの目標を達成して
いくと推測されます。

しかし、ドイツは間違いなく、
再生可能エネルギーの供給義務化を今回の法案で
強く示し、EU加盟国の中でも先陣をきって、
リードしようとしていることがわかりますね。

この2030年目標値、-22%を達成していけば、
輸送セクターで使われる燃料の約3割にあたる
28%を再生可能燃料が占める計算になるとのこと。

※これは、欧州再生可能エネルギー指令(REDⅡ)で
定められている14%の単純に倍の目標値になります

上記CO2削減目標以外では、
以下のような規定が今回盛り込まれています。

  • パーム油などから作られたバイオ燃料は、(熱帯雨林の伐採防止のため)2026年までに段階的廃止
  • 食品・飼料などから精製されるバイオ燃料は、2030年まで一定の上限値(4.4%)を設定
  • 肥料などの廃棄物から精製される次世代バイオ燃料の段階的導入(2030年までに2.6%)とインセンティブ付与(目標値以上の供給分は2倍カウント可)
  • 電気・グリーン水素の供給に対するインセンティブ付与(実供給量の2~3倍カウント可)
  • 航空セクターは、再生可能燃料の割合を2026年以降0.5%、2030年以降2%を義務付け

本法案は、今後、ドイツ連邦議会に回され可決されれば、
法案成立となり公布から約90日後に適用となる見込みです。

Renewable燃料の種別と今後の普及見込みは?

下記はドイツ自動車工業会(VDA)が公表している
Renewable燃料の種別と今後の普及予測です。

【資料】VDA発表資料から抜粋

環境にやさしい燃料としては大きく、
バイオ燃料(Bio-Fuel)とe-fuelの2種類に
大別されますが、

バイオ燃料には、既存のいわゆるパーム油など
から作られる第1世代バイオ燃料(1st Generation)と、
廃棄物由来のバイオ燃料を
次世代バイオ燃料(2nd 3rd Generation)
として定義しています。

そして、この次世代バイオ燃料とe-fuelを
総称して、“Re-Fuel”と定義し、
いわゆるこれがRenewable Fuelという
位置づけになります。

資料にも記載の通り、VDAとしては、

  • 第1世代バイオ燃料は既に使用限度が決まっており今後の使用拡大は見込めない。
  • 次世代バイオ燃料も今後の拡大可能性はあるものの、元になる燃料自体の供給量の増加が大きく見込めないため、
    拡大は限定的。
  • 一番、拡大する可能性のある燃料としては、やはり、“e-fuel”という認識

に立っています。
これにはやはり、コスト低減が必須課題であるとしています。

このように、ドイツの自動車業界側も
e-fuelの果たす重要性、CO2削減の大きな
ポテンシャルがあると期待しており、
今回の法案可決と合わせて、
燃料業界側もますます、脱炭素化、低炭素化が
促進していく事は間違いないです。

日本政府はこの課題(燃料セクターへの規制)を
どう法制化していくのか、
とても興味深いテーマだと思います。

コメント

タイトルとURLをコピーしました