【欧州激震】VW、2030年までに7割EVに切り替えがもたらす意味とは?

Climate neutrality

ここにきて大手自動車メーカーの
脱ガソリンに関する発表が
相次いでいる事はご承知の通りだと思います。

  • ジャガーが25年までに完全EVに移行。
  • ボルボは世界で、フォードは欧州で30年までにEVへ切り替え。
  • GMは、35年までにハイブリッドを含むガソリン車を廃止。
  • ステランティス(今年1月、PSAとFCAの統合で生まれた会社)は、
    今後ガソリン/ディーゼルなど内燃機関エンジンへの投資を凍結。


【出典】日経新聞記事より引用

そして、ついに先週金曜日、
自動車最大手のVW(フォルクスワーゲン)が、

2030年までに
欧州販売の7割以上をEVに切り替える
という重大発表があったのです。
VWリリース

今日はこの発表が意味する
大きなインパクトのついて
深堀りしていきたいと思います。

VW発表の主なポイント

今回、VWが発表した
電動化に向けての内容は以下です。

2030年までに
  • 欧州販売の7割以上をEVに(これまでの35%目標に対し2倍)
  • 北米、中国販売の5割以上をEVに
EVの新車投入計画
  • 既に販売しているID.3(ハッチバック型)ID.4(SUV型)に加え、毎年1車種以上を追加
  • 21年前半には、ID.4 GTX、後半にはID.5(クーペ型SUV)および中国向けの7人乗りSUV、ID.6を投入
  • 2026年以降、航続や充電速度、デジタル化の面で革新を遂げ、レベル4の自動運転も可能にする新型EVセダンの次世代EVを投入(トリニティープロジェクト)
内燃機関車両への開発
  • 内燃機関エンジンの開発も並行的に進め、EV走行レンジ100㎞以上を確保した最新型PHEV技術を既存車種(Golf, Tiguan, Passat, Tayron, T-ROCなど)も含めて搭載し、市場投入

欧州自動車CO2規制への”Big”インパクト

大きく2点あると思っています。
先ず1点目。

2030年までに7割をEVという事は、
現在、欧州自動車CO2規制で定められいる
2030年目標値は、-37.5%(21年比)であり、

これはシンプルに言えば、
2030年に自社が販売する自動車の約4割を
EVに切り替えれば達成できるレベルと
言われていますが、

これをはるかに超えるレベルです。

以前、この欧州自動車CO2規制が、
現在、-37.5% → -50%に強化の方向で
検討されている事を記事に書きましたが、
参考記事参照

仮に-50%に強化されたとしても
達成できるレベルにおいてきたという事です。

更に言えば、
環境派の欧州議会議員や、環境NGOなどは、
-60%、-65%の目標値をおくべきとの主張も
最近は目立ちます。
(例:環境NGOのリリース

もしかしたら、
VWは、この-60%、-65%を念頭におきつつ、
今回のリリースを
出してきたのかもしれません。

これまで、欧州の主要メーカーで
脱ガソリンに対する目標を発表してきたのは、
ある意味、台数もそこまで多くない、
また、車両ラインナップも小規模な
メーカーでした。

ただ、
今回、最大手のVW がこの発表を
してきたという意味は、
他の大手メーカーからしても
激震が走っているのです。

あえてイメージしやすいように、
日本に置き換えて言えば、
最大手のトヨタが、日本政府に対し、
2030年のCO2規制値は、-60%程度までなら
我々は対応できますよ!

と他社を横目にある意味、
一歩先へアピールしている事になります。

なかなか、日本人の感覚、文化から言えば、
このような一社の抜きに出た行動はやや驚きかもしれません。

もちろん、欧州市場でビジネスをしている
日本の自動車メーカーにとっても、
この発表は大きなインパクトがあります。

トヨタを含めて、
特に、EV/PHEV、ハイブリッド車を持たない、
もしくは、投入が遅れているメーカーなどは、
大きな舵取りがまさに迫られている状況でしょう。

欧州委員会は、今年2021年6月までに、
この欧州CO2規制の見直し案を作成し、
欧州議会、理事会へ
提出しなければなりません。

まさに、
この春先がその大詰めの作業と言う事です。

果たして、どのような提案が出てくるのか、
注目していきたいですね。

欧州自動車排ガス規制(Euro7)への”Big”インパクト

そして2点目は、
欧州における
次期排ガス規制(Euro7)への影響です。

上述のように、
VWは、7割をEVにするけど、
3割はまだ内燃機関エンジン(ICE)を
継続して市場に出す
と言っています。
かつ、これはEV走行100㎞以上が可能な
最新PHEV技術を搭載していくというものです。

これが何を意味するのか、、?

以前、次期排ガス規制のEuro7に関わる
検討状況の記事を書きましたが、
参考記事参照

まさに今、
内燃機関エンジンに対する最後の規制となる
規制を欧州委員会は検討中であり、
今年2021年末にはその提案が
出される予定なのです。

VWのCEOのコメントにもある通り、
いくら、電動化の世の中といえども、
まだ、内燃機関エンジン車は必要との認識で、
PHEVの最新技術をVWの代表車種である
GolfやTiguanなどに搭載し、
お客様に提供し続けるという
この発表の意味は、
全てEVに切り替えると宣言してきた、
ボルボやフォードとは大きく違ってきます。

欧州では昨今、PHEVが悪者扱いされています。
本来、しっかり充電すればEV走行で
少なくも近・中距離走行を
まかなえるはずなのに、

実際は、
EV走行ではなく、ガソリン燃料で走行し、
結果的には、自動車の型式認証をもらう時と
比べて、かなりのCO2を排出し、排ガスも出す
といった具合に非難されているのです。

この問題を解決するために、
現在、欧州委員会は、
PHEVの型式認可手法の見直しや
実走行上のCO2/排ガスを把握するための施策を
検討中です。

このVWが言っている、
最新型PHEV技術を搭載した内燃機関エンジンの
詳細までは分かりませんが、
確実に、次期排ガス規制であるEuro7を
見据えた仕様にしてくるという事です。

現状、PHEVのEV走行レンジは、
2025年以降は80㎞以上というのが相場で、
そこも見据えて、
100㎞以上としてきているでしょう。

燃費(EV走行レンジ)を向上し、
かつ、排ガスも限りなく減らす。

果たして、これを満たすために
どれだけコストアップするのか
定かではありませんが、
いわゆる、内燃機関エンジンの車両が、
EVよりも高価なものになっては本末転倒です。

そもそも、GDPがそこまで高くない、
東欧諸国の消費者などは、
充電インフラも先進国と比べて配備が
遅くなるため、引き続き大衆車としての
安価な内燃機関車両が必要なのです。

そのため、
後はコストとの闘いになると思いますが、
今後の規制当局側の動向、
自動車メーカー側の対応については
目が離せないという事です。

ちなみに、Euro7に関わる、
次回の欧州委員会主催の会議は、
4/8に予定されており、
そこである程度の次期排ガス規制の
アウトラインが見えてくる予定です。

今回も最後までご覧いただきまして
有難うございました。
それではまた。

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