本日説明したいのは、2021年の上半期(1-6月)の欧州における自動車販売でどのメーカーが好調なのか、徹底的に解説したいと思います。
21年上半期の全体市況
先ず、欧州自動車工業会(ACEA)が発表しているように、21年上半期の自動車販売台数は、前年同期比+25%と昨年コロナで落ち込んだ販売台数から順調に回復しているように見えます。
しかしながら、コロナ前の2019年上半期と比べるとまだまだ低水準が続いており、逆に約24%ほど少ない状況(台数ベースでは150万台減)なのです。
従って、世間では最近、欧州での電動車比率(いわゆるBEV+PHEVの販売シェア率)が急激に増加!!(参考記事:【最新】欧州自動車:電動化率とCO2規制の達成状況(2021年上半期終了時点))や、前年同月比で3桁増の販売台数を達成!など紙面に踊る訳ですが、実は、コロナ前の2019年の実績と比較して現在どうなっているのかが非常に重要な視点と言えるのです。
販売シェアの増加率トップはトヨタ
下記の表をご覧ください。(リンクはこちら)
2019年~2021年の各上半期におけるブランド別の販売台数の推移です。ポイントは以下2点です。
- なんとトヨタは、直近の21年上半期では欧州競合メーカーを差し置いて3位にランクイン。
- コロナ前の19年比では(一部TeslaやPorscheを除いて)、各社、軒並み大幅なマイナスを記録する中、トヨタが唯一ゼロ%を維持(19年の販売台数をキープできている唯一のメーカー)。
また下記の表もご覧ください。
2019年~3年間の各社の欧州販売シェアの推移ですが、ポイントは以下です。
- トヨタが19年比で約1.4ポイント、シェア増加。(この3年間で着実にシェアを伸ばしている事が分かります)
- 一見、VWが約1.9ポイント増加しているため、こっちの方が高いのでは?と思うかもしれませんが、これはあくまでもVWグループでのシェアであり、VWグループには、フォルクスワーゲン、 アウディ、 セアト、 シュコダ、 ポルシェなどが全て含まれている事になります。
ちなみに、これはシェア増加率トップ10ですが、トヨタをトップにBMW、Kiaが伸ばしています。
トヨタがシェア増加率トップになっている理由
結論から言うと、以下がポイントになります。
- 電動化が急速に進む欧州であっても、燃費性能の良さと手頃な価格を背景に欧州におけるハイブリッド車(HEV)の販売が絶好調
- HEVが占める販売シェアが、2019年5% → 2021年19% と約4倍に急伸
【資料】ACEA統計データより筆者作成- ゆえに、HEVに強みを持つトヨタの販売シェアが順調に伸びている。
- 車種別販売ランキングでもトヨタのヤリス(3位)とカローラ(19位)が上位20位以内に2車種ランクイン。いずれもそのほとんどがハイブリッド車でヤリスはフランス工場で、カローラはUK工場で生産されています。
筆者の考察と今後の見込み
このように、足元ではハイブリッド車の魅力(燃費と価格)が欧州でも急速に浸透しており人気化している一方で、先日発表された、欧州自動車CO2規制の見直し案においては、2035年以降ゼロエミッションカーのみの販売が許される内容(参考記事:【解説】欧州自動車CO2規制の修正案におけるefuel(再生可能燃料)の扱い)となっており、実質的にはHEVはもちろんの事、PHEVの販売もできなくなる事になります。
しかも、35年以降これらHEV/PHEVの販売禁止といっても、実際にはそれより5年ほど前(すなわち2030年頃)が、各社、最後の新型車HEV/PHEVになってくる見込みです。(35年の直前にわざわざ開発費を投入した新型車を市場に出しても、35年以降は売れないので、最低でも5年程度は販売期間を確保するのが一般的と言われています)
現状、欧州の電動化は急速に進んでいる事はデータからして明らかです。21年上半期で欧州全体でのBEV/PHEVの販売シェアは15%を超しました。
ただし、これら車両を購入しているユーザーは富裕層もしくは、一部の環境志向の高いユーザーだったり、欧州ならではのカンパニーカーの文化があるため、会社から貸与されるリースカーの入れ替え時にBEV/PHEVが選ばれていると言われます。
果たして、ヤリスハイブリッドやカローラハイブリッドなどを使用しているユーザー(いわゆるマス層)が、今後、BEVを購入するにはコストが一番の課題になるため、今後、どれだけ価格が下がってくるのか、政府の補助金頼みの現状において欧州電動化政策が頓挫するリスクも決して排除できないと思いますので、引き続き注視していきたいと思います。
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