こんにちは。ヌマッチです。
今日、このような記事が日経新聞から出ていました。
要約すると、
2020年~21年にかけて段階的に実施される欧州自動車CO2規制(域内の新車(乗用車)が排出するCO2の量を走行1キロメートルあたり平均95グラム以下とする)において、当初、各自動車メーカーのほとんどが基準未達により多額の罰金を支払う事が予想されていたが、今般の取材で、EV+PHEVの販売が延びており、一部を除き各社とも基準達成のメドが立ってきたというもの。
下記図参照
なぜここまで急激に自動車メーカー各社のCO2値が改善しているのか?
理由は明確で、記事にある通り、EVやPHEVの販売がここに来て好調だからです。今日はこの点について、少し深掘りしたいと思います。
EV、PHEVの販売好調の理由は?
理由はいくつかあると思います。
- 今年6月以降、EU各国がコロナでダメージを喰らった自動車業界を救うため、コロナ復興補助金として、EV、PHEVに対して購入補助金を出した事。
- そもそも、各社の戦略として、CO2の少ない、EV、PHEV、HEVを前面に打ち出して消費者へ購入を薦める施策を実施している事。
- CO2排出量の多い例えばSUV車などは、価格を上乗せし販売する事。(この上乗せ分で罰金を補う戦略)
- コロナで落ち込んだ新車販売台数(2020年第3四半期までで前年比約30%減の状況)でも、カンパニーカーの販売は一定量維持されており、特にPHEVを中心に売れた事。
などがあると思います。
1つ目のEV/PHEV購入補助金について、
欧州自動車工業会は、以前、このようなデータを発表しています。
以下の地図を見て下さい。
一部の赤色の国を除いて、ほとんどのEU加盟国がEV/PHEVに対する何らかの購入補助金を設定している事が分かります。
そして、その金額規模ですが、下記をご覧ください。
一番多く補助金を出しているのが、なんとビックリですが、、ルーマニアです。(金額にして11,500€ 日本円で約140万)
とは言っても、ルーマニアや2位のクロアチアでEVの販売が伸びているとは言えません。
主要国のドイツ、フランスですが、
ドイツは、今年6月にEV補助金として最大9,000€(約110万円)に増額(元々は6,000€)したほか、既存のガソリンスタンドへのEV充電設備の設置義務化を発表しました。
また、フランスは、上記表では7,000€の補助金と記載していますが、EV購入者の所得レベル(低所得者ほど有利な補助金構成)や、いわゆる既存車両からの代替(スクラップインセンティブ)などの条件をクリアすると、最大12,000€の補助金が出るのです。
また、EV中古車にも1,000€の補助金がを付与。逆に車両重量1800㎏以上の車両には2021年以降重課する方向です。
ドイツもフランスも、補助金の金額規模は違うものの、当然、PHEVにも同様の補助金が出る仕組みをもっています。
上述した4つ目の理由で、カンパニーカーの需要が維持された事を上げましたが、カンパニーカーは、この購入補助金以外にも、車両購入、保有時における税制上の優遇があり、コスト負担をする企業側の都合からも好都合という事なのです。
(※ ドイツ、フランスと同様、EVの普及が進んでいるUKですが、実は独仏と比べて大幅に低い補助金しか出しておらず、UKの業界団体などはこのままでは普及が遅れると訴えている状況です)
ついに! 10台に1台がEV・PHEVの時代へ!!
ちょうど今日、欧州自動車工業会は2020年第3四半期(7~9月)における、燃料種別販売台数を発表しました。
特筆すべきは、EU全体でいよいよ、10台に1台(全体の9.9%)がEV/PHEVの車両になってきたという事です。
2019年年第3四半期のEV/PHEVの販売シェアが3%だった訳ですから、これが3倍以上の9.9%(増減率:211.6%)になった事は確かにすごい事かもしれません。(2020年1Q-3Q通期の増減率:122%)
ただし、このデータをよく見ていくと以下の事が分かります。
2020年3Qで急増しているのは、EVではなく、ほとんどがPHEVという事!
- PHEVのQ3前年同期比:368% (Q1-Q3通期:221%)
- EVのQ3前年同期比:132% (Q1-Q3通期:71%)
これを見ると、PHEVの伸びが4.5倍以上と、もの凄い急上昇レベルだと分かると思います。
PHEVは本当に環境にいいクルマなのか?
PHEVに対し、以前9月に、環境シンクタンクのICCT(The International Council on Clean Transportation)はこんなリリースを出しました。
要約すると、
- PHEVの実燃費(実CO2排出量)は、自動車の型式認証時の値と比べて、2~4倍高いデータ示されている。
- 特にカンパニーカーにおいて高いCO2排出データが検出されており、走行中の電動駆動比率(ガソリン走行ではなくどれだけEV走行で走っているか)を表すUF(Utility Factor)も、平均すると、型式認証時は約7割に対し、実際は、4割弱に留まっている。
- 特にドイツのカンパニーカーに至っては、UFが18%しかなく最低レベル。
といった内容です。
各社がCO2規制を満足するためPHEVを開発、販売し、それによりCO2も低減され大気環境も改善すると思われていました。
しかし、使用の実態からするとやや乖離があるようです。
実走行でどれだけCO2が出ているのか、今後、色々と話題になってきそうですね。
今日の記事をまとめます。
- 自動車メーカー各社がコロナ補助金の影響もあって、EV・PHEVが順調に推移し、欧州CO2規制達成の目途が立ちつつある。
- 2020年第3四半期(7-9月)に、ついにEU全体の新車販売の10台に1台がEV/PHEVの時代となった。
- この急増に寄与しているのはPHEVの増加だが、実走行レベルのCO2排出は疑問が残っている。
それではまた。
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