【欧州:自動車最新情報】EVを買わなければならないもう一つの理由(Zero emission zone)

Electrification

今日は、欧州を中心に広がりを見せている、各主要都市のゼロエミッションゾーンの措置について解説したいと思います。

昨今、メディアでも毎日のように取り上げられている、各国のガソリン車販売禁止の措置ですが、欧州委員会は今年7月、2035年以降のガソリン車販売を禁止する法案(参考記事はこちら)を提出した事は記憶に新しいと思います。

ガソリン車からEVへという大きな流れは、欧州を筆頭に加速度的に広まっていますが(参考記事:【最新】欧州自動車:電動化率とCO2規制の達成状況(2021年上半期終了時点))、この流れを推し進めるものは、ガソリン車販売禁止だけではという事実をご存じでしょうか?

それは、ゼロエミッションゾーンの設定ということで、すなわちガソリン車やディーゼル車は、このエリアは走行すら許されない。バッテリーEV(BEV)や燃料電池車(FCEV)しか走行できませんよ!という措置が実際にもう行われているのです。

環境NGOの国際クリーン輸送協議会(ICCT:International Council on Clean Transportation)は8/30、グローバル各地の主要都市において、既に実施中もしくは計画がアナウンスされているゼロエミッションゾーン(ZEZ:Zero emission zone)のUpdateレポートを発表していますので、解説していきたいと思います。

ゼロエミッションゾーン(ZEZ)の方式は主に2種類

下記の図で分かる通り、現状、ゼロエミッションゾーン(以下、ZEZ)を実施中もしくは計画がアナウンスされている都市は欧州が中心となっており、一部、中国、インドにもある事が分かります。

ZEZの主な措置の内容としては、基本的に以下2つがあります。

    1.指定エリア内で走行できる車両を段階的にZEVs(BEVとFCEV)のみにしていく方式

    2. 車両のCO2排出量や排ガス規制レベルに応じて料金をチャージし、走行を認める方式

1.の方式については、概ね、2030年でZEV Only(BEV/FCEVのみ走行可能)とするのが一つの目安となっています。
2.の方式は、例えば、UK・オックスフォードの例のように、車両のCO2排出量(75g以上/未満)や排ガス規制レベル(ガソリン車:Euro4以上/未満)に応じて料金をチャージ(Daily Charge)し、走行を認めるケースがあります。(下記参照)

CO2排出量75g以下という実質PHEV(プラグインハイブリッド車)しか達成できないレベルですが、PHEVでも毎日2ポンド(日本円で約300円)の料金が掛かるというのは、本当に驚きですね…。しかも25年以降はその料金が倍になる計画です。

また、ロンドンの一部道路などは、既に運用が実施されているが、現状はPHEVも走行を認めています。
ただし、CO2排出量75g以下かつEV航続距離20マイル以上のPHEVが条件となっており、かなり厳しい措置になっています。
このように、PHEVも認めるゾーンは、このレポートでは“Near-ZEZ”と定義しています。

このZEZ規制は、乗用車のみならず、重量車(貨物車両)に特化した規制(このケースは、zero-emission zones for freight (略してZEZ-Fs)と定義)を定める都市も既に多く存在しており、例えばロッテルダムやコペンハーゲン、中国の深センなどです。

具体的なZEZ措置の内容と違反者への罰金は?

走行禁止となる時間帯はあるの?

    概ね、乗用車の走行禁止規制は、平日の朝8時~夜8時などが多く、一方で大型貨物車は、平日・休日問わず終日の同時間帯が規制される事が多いです。(したがって、夜間だけは走行可能という事です)

ルールを守らなかったらどうなるの?

    基準を満たさない車両は、カメラによるナンバープレートの読み込みから罰金を科す方式。(概ね日本円で1~2万円程度が相場。期限内での支払いがなかった場合は追徴料金があり、大型貨物車への罰金は更に高く設定されるのが一般的です。

大都市パリの例を解説

パリを一例として挙げると、

既に各車両のカテゴリー毎にステッカー(下記参照)がフロントガラスに貼られており、現状、警察による取り締まりが実施されているが来年2022年7月までには、自動カメラによる取り締まりに切り替える計画となっています。

BEV/FCEVは緑。PHEVとHEV(ハイブリッド車)、排ガス規制レベルがEuro5/6のガソリン車は紫のステッカーが貼付されるのです。

罰金は、HEV/バスが17000円、乗用/小型商用が9000円程度。45日以内に支払いがない場合は、重量車48000円、小型車23000円に割増されます。

今後の日程としては、下記地図の白とライトブルーのゾーンにおいて、以下の措置が取られ、段階的に走行できる車両が限定されていくのです。

    22年7月~:ステッカーの色が緑/紫/黄の車両
    24年1月~:緑/紫のみ
    30年~:緑のみ(BEV/FCEVのみ走行可能)


なお、下記の表が全体のOverviewとなっており、上4つが既に実施中の措置で、下は今後計画されている内容です。
大都市という意味では、ロンドン、パリ、アムステルダムなどが既に計画を発表。(30年以降はZEVのみ走行可能するのが一つの目安になっている事が分かると思います。)

今後ますますクルマの電動化が加速する欧州

以上見てきたように、
ゼロエミッションゾーンの設定により、もともとそのエリアに居住している市民や、勤務先もしくは子供の学校がゾーンにある場合でクルマ通勤/子供の送り迎えがある場合は、当然、その人達から2030年を見越して、BEVへの代替を考えざるを得ない状況となってくるのです。
また、ZEZの設定と合わせて、大都市中心部においては、厳しい速度規制が既にヨーロッパでは実施されています。パリでは一部シャンゼリゼ通りなど除き、時速30㎞規制が始まっています。

このように、特に都市部でクルマを使う消費者にとっては、クルマ自体の使い勝手が悪くなっていく一方、それでもクルマを所有する場合は、BEVのみにするといった図式が鮮明になってきています。

欧州ではまだまだディーゼル車がたくさん走っており、特に渋滞の多い大都市では、排ガスによる大気汚染レベルを改善すべくこのような措置が実施されているのですが、果たして、日本でもここまで厳しい措置(現状、東京などでは古いディーゼル車などの走行規制制度はありますが、)が今後設定されるのか注目していきたいと思います。

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