昨年後半から世間を賑わせている”脱ガソリン車”問題。
既に日本も含めて、いくつかの国、自治体が脱ガソリン車の目標時期を発表しています。
(資料:日経新聞より)
この中で、日本と欧米の大きな違いは、
ハイブリッド車の扱いです。
日本は、国も東京都も当然、日本メーカーの強みでもあるいわゆる一般的なトヨタプリウスのような、外部からの電気による充電機能を持たないハイブリッド車までを販売禁止するとは言っておらず、
一方で、欧米はこのハイブリッド車を含めて販売禁止としているため日本の自動車メーカーとしても大きな影響があるのです。
英政府は3/10、
2030年の脱ガソリン車規制に関わるUpdateを発表したので、今回、この内容を解説します。
(英国政府の発表はこちら)
これまでの経緯について
英政府は、ガソリン車とディーゼル車の新車販売禁止時期について、当初計画の2040年から2度の前倒しを発表しています。
時系列的にまとめるとこのような具合です。
- 2017年07月:2040年までに禁止
- 2020年02月:2035年までに禁止
- 2020年11月:2030年までに禁止(※ただし、ハイブリッド車は35年まで販売可)
- 2021年03月:今回の発表
2020年2月の発表と同時に英政府は、
脱ガソリン車規制に関わるパブリックコメントを開始。
2020年2月~7月の期間で実施しました。
今回発表した内容は、このパブコメの結果と今後の進め方についてリリースした事になります。
今回発表された最も重要なポイントとは?
上述した通り、昨年11月、
2030年までの脱ガソリン車規制を発表した際、
ガソリンと電気を併用するハイブリッド車(HV)は、35年まで販売可とアナウンスされましたが、このHVの定義が明確ではなかったのです。
というのも、HVには、主にHEVとPHEVの2種類あるからです。
日本人には馴染みのある、
トヨタ/プリウスのようないわゆる外部充電を持たないHEV(ストロングハイブリッド、フルハイブリッドとも呼ばれることがあります)と
プラグを差して外部充電できるPHEV(プラグインハイブリッド車)です。
当然、日本メーカーの強みでもある、
HEVがいつまで販売できるのかという部分は自動車メーカーにとっても影響が大きく非常に関心が高いです。
かつ、この英国の政策がある意味一つの指標(スタンダード)となり、今後、英国以外の他国(欧州、北米、アジア)に波及する可能性があるためなおさらです。
- HEVもPHEVも、2030年以降の5年間は、販売可能。
- ただし、“CO2排出量が限りなくゼロに近い性能をもったHEV・PHEVに限る”
という内容が発表されました。
英語の原文から引用すると、
“significant zero emission capability”を
持ったHEV・PHEVと言っています。
この“CO2排出量が限りなくゼロに近い性能”をどう定義付けていくのかは、
これから、自動車メーカーを含めて関係者と相談しながら、
今年の後半には発表するとの内容です。
今年の後半。そう。今年の11月には、英国がホスト国となって開催するCOP26があります。
他国に先駆けて、カーボンニュートラルへの取り組みを加速していくというメッセージを打ち出すにはベストのタイミングと言えるでしょう。
ここを一つのターゲットに、“significant zero emission capability”の定義については、議論が煮詰まっていく事でしょう。
繰り返しになりますが、
2035年以降は、どんなに性能が良いHEV、PHEVであっても自動車のテールパイプからCO2を排出する車両は全て販売禁止です。
英語原文を抜粋すると以下の2ステップで規制される見込みです。
2030年以降販売できるHEVのCO2性能を予想してみると?
さて、気になるのは、
2030年~5年間販売が許されるHEVとは果たしてどんなレベルなのか考察してみましょう。
- 10~20gCO2/㎞以下のレベルで最終的には(半ば強引に、、)決着してしまうのではと予想します。
前回の記事でも触れた通り、
(参考記事:【欧州激震】VW、2030年までに7割EVに切り替えがもたらす意味とは?)
VWは、2030年までにEV比率を7割以上に引き上げ、ガソリンなどを使う内燃機関車両は、EV走行レンジを100㎞以上確保したPHEVを投入すると宣言しています。
当然、車両の大きさなどにもよりますが、
例えば、代表的な直近のVW-GolfのPHEVで言えば、約60㎞のEV走行レンジを持ちCO2値は、約30g弱(WLTPモード値)です。
という事は、
ここから、2030年に向けて100㎞以上のEVレンジにするので、約1.66倍性能をアップする訳ですから、30gを単純に1.66で割ると、18gという計算になります。
とは言っても、
VW-Golfのような小型車ほどEVへのシフトがしやすいため、車体サイズの大きいSUVタイプの車両などがPHEVのメインと考えられます。
それらは、現状、おおよそですが、50㎞EVレンジで、40~60gのCO2を出します。
従って、今後の技術革新を考慮しながら、2030年には20~30gCO2の性能がマストになってくるのではと予想します。
例えば、トヨタが現在出しているHEV(ハイブリッド車)のCO2値は以下の通りです。
どれも、PHEVを除いて100g以上で、ここから、2030年までに20gまで下げられるとは到底考えにくいと言わざるを得ません。
英国政府は今回の発表の中で、
どんな技術を搭載してようとも、中立的に評価しその技術を考慮するといった技術中立のスタンスを示しています。
何かを優遇し、何かを意図的に排除するというものではなく、全て平等に評価するという事です。
従って、PHEVでもHEVでも平等に扱い、CO2排出量が20g以下であれば、2030年以降も5年間は販売してもよいというロジックになるのではないでしょうか。
今後の注目すべきポイントは?
注目すべき点は、2つだと思います。
- PHEVとHEVの間に少し差を付けるのか(要するにHEVは多少緩いCO2値を設定するのか)
- HEVの代表メーカーであるトヨタが、今後どのような渉外を英国政府に働きかけていくのか
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