【最新】欧州における合成燃料、再生可能燃料(E-Fuel、Sustainable renewable fuel等)に関わる最新状況

synthetic fuel

本日は、欧州における合成燃料/再生可能燃料(E-Fuel、Sustainable renewable fuel等)に関わる最新状況のレポートしたいと思います。

✔本記事のもくじ

  • 1. 合成燃料に関わる足元の欧州情勢
  • 2. E-Fuelに対する欧州各組織のスタンス
  • 3. 今後の見通し

1. 合成燃料に関わる足元の欧州情勢


先ず、欧州における合成燃料に関わる足元の状況を確認します。

欧州委員会は、昨年2021年7月、欧州自動車CO2規制の見直し案を発表(2021年8月25日参照記事2021年11月18日日記事参照)。

CO2排出規制、2035年-100%が意味するものとは?

その改訂案でとりわけ注目されるのが、2021年比で自動車CO2排出量を2035年にー100%するというものです。

これはシンプルに言えば、自動車の内燃機関(いわゆるエンジン)でガソリンや軽油などの燃料を燃焼させて走行する自動車の販売を2035年以降は禁止するというものです。

つまり裏を返せば、2035年以降は走行時にCO2を一切出さないBEV(Battery-EV:電気自動車)もしくはFCV(Fuel-cell vehicle:燃料電池車)のみ販売可能という意味になります。
日本の自動車メーカーがこれまで得意としてきたハイブリッド車(HEV)や欧州の2021年新車販売台数のうち約10%程度を占めるプラグインハイブリッド車(PHEV)も実質販売ができなくなるというものです。

ただ、この欧州委員会改訂案について、
極端なクルマの電動化シフトは、自動車業界が持つ巨大なサプライチェーンへの影響、すなわち雇用へのインパクトが大きすぎるとの観点から内燃機関車両の存続を訴える組織も存在します。
部品点数の多い内燃機関車両を少しでも継続生産するため、何とか、efuelなどの再生可能性燃料とのセットで存続すべきという主張なのです。

一方、環境派の議員や団体などからは、
速やかな電動化シフトこそがパリ協定の目標や、2050年のカーボンニュートラル達成という意味においても、欧州の段炭素化に最も寄与する道だとして、2035年より前に内燃機関車両の販売を禁止すべきとの意見も散見され、一進一退といったところです。

2. E-Fuelに対する欧州各組織のスタンス


ここから、各組織が表明しているE-Fuelに対する最新スタンスを見ていきます。
下記の表をご覧ください。


【出典】公開情報/ニュース記事等から筆者作(PDFで表示)

以上のように、要約すると主に3種類のスタンスに分けられます。

  • 1.2027,28年頃の中間レビュー時にE-Fuel等の技術革新度合い、および自動車への適用可能性を評価(欧州委員会、欧州議会、ACEA)
    例えば、下記のような文言(欧州委員会改定案より抜粋)

  • 2.エネルギー効率の悪さ、コスト面、排ガスによる大気汚染懸念などから自動車への適用は非現実的環境NGO
  • 3.ICE×再生可能燃料をセットで捉え、インセンティブを与えるべきCLEPAVDAドイツ

3. 今後の見通し


以上のように、欧州において自動車へのE-Fuelの活用は、現時点では非常に厳しい見通しであると言わざるを得ないと思います。

ただし、ドイツを中心に自動車産業に関わる雇用が多い国ほど、内燃機関車両×再生可能性燃料のオプション存続を訴える声が大きく、今後の政治ゲームにおいてどう妥協点を見出すか注目されます。

当然、E-Fuelの生産には水を電気分解するための大量の再エネ(余剰再エネ)が必要です。欧州はグローバルで見てもエネ比率目標を高く設定していますが、今般、ドイツは2035年までに国内全ての電力需要を100%再エネで賄うという案を検討しています。
ロシアからのエネルギー依存度を下げる意味合いもあるとの事だが、背景には、少なからず上記のような自動車へのE-Fuel適用を訴える以上、アグレッシブな再エネ生産目標を掲げる必要があったのかもしれません。

いずにしても、欧州自動車CO2規制は、
欧州議会・理事会において春以降、各々のポジションを定めるべく本格的なディベート、投票作業などが実施され、本年2022年末をメドに最終決着する見通しとなっています。

それではこの辺で。

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