国内でも相次ぐガソリン車販売禁止措置
みなさんこんにちは。
先週から一気に日本でもガソリン車の販売禁止に関わるニュースが相次いで報道されていますね。
中でも驚いたのは、昨日東京都から発表された2030年でガソリン車の新車販売を禁止する方針を打ち出した事ではないでしょうか。
現時点、政府が検討しているベースが2030年半ばなので、それよりも更に5年前倒しする提案になっています。
これは一見するとUK(英国)の打ち出した提案と同様のように思われがちですが、違います。
UKは、いわゆるトヨタのプリウスに代表されるHV(ハイブリッド自動車)も含めて2030年以降の新車販売が禁止ですが、東京都の提案および日本政府が検討中の措置は、HVを禁止車種に含んでおりません。(さすがに日本メーカーの強みであるHVの排除は出来ないという事)
【資料】日経新聞記事より引用
現在、政府は2050年のカーボンニュートラル達成に向けて、全てのセクターにおける低炭素化、脱炭素化に資する技術の洗い出し、ポテンシャルの試算と実現可能性など騒動員で取り掛かっている事が容易に想像できます。
明日(12/10)予定されている政府・自動車業界との協議内容およびその後の政府発表が注目されるところです。
EUの最新情報
さて、EUの状況はと言うと、このブログでもこれまで取り上げさせて頂きました通り、UKが2030年以降のICE(Internal Combustion Engine:内燃機関)車両(いわゆるガソリン/ディーゼル車のこと)の販売禁止を発表し、欧州の行政執行機関である欧州委員会も2035年をベースに検討中であり、ただでさえ厳しい自動車CO2規制とセットでまさに今、電動化へ大波が押し寄せている状況です。
※UKのガソリン車販売禁止措置においては、PHEV(プラグインハイブリッド車)は2035年まで販売可能となっていますが、通常のHV(ハイブリッド車輛は2030年で販売終了です)
現行の欧州自動車CO2規制で言えば、2030年は、2021年比‐37.5%のCO2削減が各自動車メーカーに求められており、ざっくり2030年には新車の約3割強をEV(電気自動車)もしくはFCV(燃料電池車)などのゼロエミッションビークル(ZEV)にする必要があります。
更に、この-37.5%を-50%に引き上げるべく、欧州委員会は現在検討中です。仮に-50%になった場合は、新車の半数をZEVにしないと計算上達成しない事になります。
いくら政治マターの方針とは言え、この基準が本当に達成できるものなのか?消費者がクルマを買えなくなる、乗れなくなるなど、不都合が起きないのか?など色々考えてしまいますが、ここにきて、輪をかけて一気にガソリン車、ディーゼル車の販売禁止措置の機運が盛り上がっているという事です。
欧州委員会は、この自動車CO2規制とICEの販売禁止措置の両輪で一気に自動車セクターの低炭素、脱炭素化を加速させる段取りです。
実は知られていないもう一つのガソリン車禁止措置
ところが、実質、2030年よりも更に前にICEの販売ができなくなる重大な理由がもう一つ欧州にはあります。
意外と知らされていませんが、現在、欧州委員会は、ICEの次期排ガス規制の策定を実施しており、現在は法案策定のための調査段階フェーズであるものの、来年2021年末には最終的な欧州委員会の提案が出てくる事になっています。
法案策定のための専門家会議(欧州委員会や調査研究機関、自動車関係業界などから構成される会議体)の資料などは公開されており、誰でも見ることができます。日本の自動車団体も意見を物申している事がわかります。
ここで重要なのは、現在、欧州委員会が調査研究委託しているコンサルタント会社からの次期排ガス規制案が既に出ている事です。
下記の表をご覧ください。車から出てくる排ガスの種類別の規制値の図です。現在の排ガス規制がEuro6、コンサルタントから出てきた提案がAとBの2案に分かれています。
【資料】欧州委員会委託コンサル会社の公開資料より引用
簡単に言うと、一番排ガスの種類で分かりやすい、NOxやCO(喘息を引き起こしたりする物質)の規制値が軒並み1/2や1/3に厳しくなっており、B案に至っては、現行規制レベルの1/6、1/10レベルまで下げる案になっています。また、これまで規制化されていなかった、CH4(メタン)やNH3(アンモニア)など新規で規制化される物質も追加されています。
更に、下記の図は、車を世に出す際に国の認証を取ってから市場投入する事になりますが、その際の排ガス認証試験を現行より厳しくするといった提案です。
【資料】欧州委員会委託コンサル会社の公開資料より引用
簡単に言いますと、テスト温度条件をこれまでの-7℃~35℃から-10℃~40℃に拡大し、かつ、これまで車がスタートしてから16㎞の範囲での測定だったところ5㎞に短縮。
車は気温が低い条件や、エンジンが温まっていない状態が一番排ガスが出る構造となっているため、この試験条件でかつ上記の強化された規制値を満足するというのがかなり難しいという事です。
自動車業界の資料を見ると、現在存在する排ガス低減装置をどんなに組み合わせ車両に搭載したとしてもこの規制を満足することは非現実的であると主張しています。
次回この会合は、来年2月に実施されるようですが、このコンサルタント提案をベースで恐らく、欧州委員会は来年末の提案に漕ぎつける事でしょう。
過去の資料を見ると、この次期排ガス規制(Euro7)の規制開始時期は2025年以降のようですが、仮に2026年としてもあと5年後です。
既に5年後の新型車開発は、各自動車メーカーとも当然着手済で諸々の検証段階と思います。このEuro7の提案が今後どうなっていくのか次第では、各自動車メーカーとも一気に欧州ビジネスにおいてはICE開発を諦め、EVなどの電動車に切り替える事が予想されます。
そうなると、実質2025年以降は、新たなICEの新型車が世に出てくる事が想像しにくく、間接的ではあるものの、上述の2030年、2035年のガソリン車販売禁止よりも前に、排ガス規制でICEの新型車が出せない状況になるという事です。
益々、ICE廃絶への包囲網が敷かれる欧州。今後、この排ガス規制の内容にも注目したいところです。
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では。
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