【最新】 EVの価格はどこまで下がるのか?

Battery

こんにちは。ヌマッチです。

一昨日、日経新聞の記事に興味深いトピックスが掲載されていました。

このブログ内でも先日触れておりましたが、ヨーロッパのセルビアにEV用駆動モーターの大規模工場を新設する事を発表した、日本電産の永守会長兼CEOが世界経営者会議のフォーラムにてこんな発言をされました。

“2025年以降にEV普及が加速し、「30年ごろには市場全体の5割を超える」。また、EVの価格は「現在の5分の1まで下がる」とし、新興国の低所得層などにも市場が広がる。”


【写真】 日本電産:永守会長兼CEO

今日はこの部分を少し深掘りしたいと思います。

EVの車両価格が本当に5分の1まで下がるのか?

【結論】:確実に下がります!!

価格が下がってくる要因は色々考えられると思いますが、以下2点に集約されるのではないでしょうか?

  • EVの核となるバッテリーとモーターの技術革新と量産効果による大幅なコスト低減
  • 自動運転化による、車体構成部材のシンプル化

永守会長の発言の前提条件や詳細は分かりませんが、
EVにおける中核部品であり、かつ価格決定に大きな割合を占めている“バッテリー”は、間違いなく今後の技術革新、市場スケールの拡大により大幅に下がってくると見込まれています。

また、もう一つの核となる部品“駆動モーター”においても同様です。 まさに日本電産は、この駆動モーターの市場規模が今後急激に増加する事を捉えて、全世界的に巨額の設備投資を実施し、シェア獲得に動いているのです。

価格が5分1になるとはどんなイメージか?

現在、EVはどんなに安価な車両でも、ざっくり500万円前後ですし、そのほとんどが500~1000万円クラスの車と言えます。
2030年には半分がEVに置き換わるという前提での量産効果を加味すれば、500万→100万。1000万→200万という数字は決してあり得ない数字ではないという事です。

ある統計データによると、2015年にアメリカの中型車では、バッテリーのコストが車両価格全体の57%を占めていました。それが、2020年には約30%まで下がり、2025年には車両全体のわずか25%になると予測されています。
今後の大量生産による量産効果を考えれば更にこの数字は加速する事でしょう。

既存のガソリン車の部品点数は少なくても3万~多いのは10万点とも言われます。
それがEVになるとどうでしょう。わずか8千~1万点程度と言われています。

このように、エンジンや排ガス制御装置など複雑な部品を多数組み合わせて作るガソリン車と比べ、激的に車両の内部構造がシンプル化する事もコストが下がってくる要因です。

また2点目に記載した「自動運転化による、車体構成部材のシンプル化」についてですが、
2030年には、自動運転の世界が来ており、人は車を運転しない交通事故ゼロといった世界が見込まれます。
そうなるとクルマはどうなるのか?

ハンドルも要らない、メーター機器類も不要、衝突しないから衝突安全装置も不要、ボディーも極端な話、高コストな鋼鈑から薄い樹脂製のボディーに変更できるなど、考えたらキリがない程、数多くのコストカット余力があるという事です。

おまけに、これは車両価格とは関係ないですが、EVは構造がシンプルなため、故障も少なく、メンテナンスにかかる費用も既存のガソリン車よりもはるかに安く抑える事ができるというメリットがあります。

このように2030年には、我々がまだ想像もできないかもしれませんが、低所得者層や新興国の方々でも手に入れる事ができる、100万円EVは確実に現実味のある話と言えると思います。

2030年に向けての自動車メーカー各社のEV戦略は?

では、実際にTeslaおよび欧州の主要自動車メーカーが2030年に向けてどのようなEV戦略を描いているのか、整理してみたいと思います。

【テスラ】

  • 今年9月、新たなバッテリー戦略(設計、素材、搭載方法などを見直しEV用セルを内製化)を発表。
  • 設計や素材、生産プロセスを抜本的に見直し、3年後(2023年)をメドにバッテリーの容量当たりの生産コストを現在の半分以下に引き下げ、ガソリン車を下回る2万5000ドル(約260万円)のEVを発売する事を宣言。

【VW】

  • 今年9月、ID.3(約3~3.5万ドル程度)の発売開始。SUV型EV「ID.4」の受注を開始。(価格は4万ドルだが、2年後には3.5万ドルまで下げる計画。(テスラの同等車種 モデルYは約5万ドル))
  • 今後は、第3弾として、ミニバン型EV、より大型のSUV型EVを投入し、25年までに世界販売の2割(300万台)をEVにする計画。29年までに75車種のEVを投入

【Daimler】

  • 電動化戦略として、30年に新車販売の50%をEVまたはプラグインハイブリッド車(PHEV)とする計画。

【BMW】

  • 欧州における電動車の割合を2021年に4分の1とする計画。2025年には全体の3分の1、2030年には2分の1にまで引き上げることを計画
  • 2023年には、BMWグループの電動車のラインアップを25モデルとし、そのうち半数を純粋な電気駆動車(EV)とする計画。

このように見ると、各社ともにやはり電動化に対する意気込みがすごいですね。

日本の自動車メーカーが直面している欧州市場での苦悩とは?

【結論】:魅力的な低CO2排出車やEVを妥当な価格で提供できないブランドには、欧州での未来はない。

上述の通り、欧州主要メーカーは、急速に電動化へのシフトを加速しています。その裏にはもちろん自社内の大規模な人員削減計画やサプライチェーンの大変革を伴っています。


【資料】:電動化シフトに伴う各社の人員削減等計画(日経新聞より)

ご存知の通り、欧州では2020年~2021年にかけて、段階的に厳しいCO2規制が課せられており、PHEV版SUV「アウトランダー」を持つ三菱自動車でさえ、欧州市場への新車投入凍結を表明している状況です。

下記の図をご覧ください。

【資料】欧州市場における日本車メーカーの現状(日経新聞より)

厳しい環境規制などを背景に、日本の自動車メーカー各社が欧州生産拠点(工場)の閉鎖を発表したり、CO2規制未達の際の罰金対策としてホンダやマツダがEVを欧州で投入するなどの策を講じていますが、状況は全く芳しくないと言えるでしょう。

各社とも全ボリュームに対する欧州市場の規模はそこまで大きくないものの、全く無視できる市場ではなく、ブランディングの観点からしてもこの環境先進国である欧州でビジネスを継続するというのは、自動車メーカーとしてもある意味拘る部分もあると思います。

日本の自動車メーカーは、欧州市場での今後10年の戦略、立ち位置の再考に迫られている状況であり、10年後には、日本電産のような有力な技術を持つ、EV部品メーカーしか日本企業が存在しないのかもしれません。

それではまた。

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