ICCT(国際クリーン輸送協議会)は8/3、EEA(欧州環境庁)から暫定値として公表されている欧州自動車各社の2021年CO2排出実績をもとに、基準達成状況についてリリースした。
もともと本年2月の時点で、ICCTは独自の推計により各社の達成見込みをリリースしていたが(その時の記事はこちら)、今回は、EEAの公式データに基づきアップデートしたものとなっている。
今回その主な要点について解説する。
1.全社、基準値をクリア!!
下記グラフから分かるように、
- 2021年の欧州全体のWLTP₋CO2排出目標値(119g/㎞)に対して、真水で(つまりCO2排出削減ボーナス措置を含めないで)115g(前年比−16g)。
- スーパークレジットやエコイノベ等のボーナス措置(いわゆるフレキシビリティ)を含めると113gを達成。
【出典】ICCTレポートから引用
✔グラフの見方のポイント
- 2021年からWLTPという新たな燃費測定法が採用(旧NEDC法に比べて、より実燃費に近い値になる測定法)された。
- 2021年の各社平均CO2目標値は119g(オレンジの実線部分)
- それに対し、実績値ではわずかに下回って115g(オレンジの太線)
- 更にフレキシビリティ込みだと113g(オレンジの破線)
2.各社の達成状況
下記グラフから分かるように、
- 10個あるOEMプーリング(全体シェアの96%を占める)全てにおいて目標を達成。(つまり、個別の自動車メーカーに対する未達による罰金措置はない。
- 平均6gの過達。Tesla以外でBMW、メルセデスベンツが10g過達と目立つ。
- スーパークレジットを今回使っているのは、StellantisとToyota₋Mazda₋Suzuki-Subaruの2つのプーリングのみ。(あとの8つのプーリングは既に使い果たしたため)
- エコイノベーションを最も使用しているのはFord。
【出典】ICCTレポートより抜粋
✔参考情報:スーパークレジット、エコイノベーションなどの詳細はこちらから。
3.欧州各国の車種別販売状況
欧州各国の車種別(いわゆるEV/PHEV/HEV/ガソリンなどパワートレイン別)シェアは以下表の通り。
- BEVの国内販売シェアとしては、ノルウェーが引き続き圧倒的なシェアをとっており、64.5%(※PHEV21.7%と合わせると、BEV/PHEVで86.2%)
- PHEVは、アイスランドの31%を筆頭に、スウェーデン、フィンランド、デンマーク、ノルウェーろ北欧勢が20%越え
- HEV(ハイブリッド)に関しては、フルハイブリッドが、フィンランドの14.8%を筆頭に、北欧勢やバルト3国で高いシェアを記録
- マイルドハイブリッドは、ハンガリー31.7%、リトアニア25%を筆頭に、イタリアも20%超えと高い
【出典】ICCTレポートより抜粋
4.各自動車メーカー別、車種別/パワトレ別販売状況
- ここでの特徴は、やはり、Toyota₋Mazda₋Suzuki-Subaruのプーリングが、突出してHEVのシェアが高い事。(マイルド/ストロング合わせて、72.7%)
- その他、BEVは当然、Tesla₋Honda他のプーリングが一番高く、Hyundai/KiaもBEVのシェアが高い事がわかります。
- 一方、ディーゼル車の販売は全体としては落ちていますが、BMW/メルセデスベンツなどは、依然、ディーゼル車のシェアがそれなりにまだあります。
✔直近3年間における、販売シェア推移とCO2排出量の変化
下記グラフを見て分かるように、
- 通常のガソリンICE車とマイルドHEVのCO2排出量はほぼ同程度である事がわかります。(赤のマーキング部分)
- これは、マイルドHEVが重量の重い比較的大きな車両に搭載されたためとしています。
5.ICCTからの推奨事項
ICCTは最後に、以下2点を注記として推奨しています。
- 欧州委員会から提案されている2025年目標値‐15%は、ほぼこのまま決着するだろうが、その後、2030年までの中間目標がない(つまり、2027、2028年あたりの目標設定がない)ため、2020年規制の時のように、その規制年に差し掛かる前段階では、CO2排出量が増加し、革新的技術の市場投入が遅延する恐れがある。⇒ ✔つまり、中間目標の設定をすべきということ。
- 型式認可時のCO2値と実環境下でのCO2値に乖離がある問題で、欧州委員会は2020年からOBFCMでのデータ取得を実施しているが、速やかにデータの検証とReal₋Worldを反映したCO2値とすべき。
本年9月以降、欧州CO2規制の改定案に対する3者協議(欧州委員会・議会・理事会による協議)が実施されます。引き続き、アップデート情報をお知らせしたいと思います。
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