今年も残すところあと半月も無くなりました。
欧州での環境政策という観点で振り返りますと、2020年のキーワードは、この2つではないでしょうか。
- ①グリーンリカバリー(green recovery)
- ②サステナブル(sustainable)
コロナが本格到来する前の2019年12月、欧州委員会は2050年のカーボンニュートラル達成に向けた行動指針「欧州Green Deal政策」を発表し、翌3月、まさに欧州各国がコロナによるロックダウンを決断をし始めた中、「欧州新産業戦略」など具体的な施策が公表されました。
また、2020年夏には、コロナで大打撃を受けた欧州経済を経済・環境の両面で早期に立ち上げるべく「グリーンリカバリー」と名付ける巨額の財政支出を決定し、今日に至っています。
今年は、日本を含む多くの国、地域が2050年のカーボンニュートラル、2030年のCO2削減目標、自動車のガソリン車販売禁止措置など相次いで発表するなど、世界へのアピール合戦が激化した年とも言えるでしょう。
今回の記事では、2050年のカーボンニュートラル達成に向け、今欧州ではどのような動きを具体的にしているのか行政的な観点で少し整理してみたいと思います。
2050年カーボンニュートラル達成に向けた全方位での法的枠組みの整理
現在、欧州では脱炭素、低炭素に資する法律を全て洗い出し、その全ての法規において見直し作業を実施している最中です。
下記の表をご覧ください。
【資料】欧州委員会サイトより筆者作成
現在欧州委員会は、細かく分けると82項目に渡る見直し対象法規/ルールを定め、各期限までの改訂案を提出するべく活動中です。
上記項目は、中でも自動車分野に特に関係してくる項目であり、今後、改定案が出てくるまでの想定スケジュールは以下の日程感となっています。
【資料】欧州委員会サイトより筆者作成
各法規見直しのポイント
各法規について現在検討されている改訂の方向性ポイントを簡単に解説したいと思います。
乗用車CO2規制
- 2030年のCO2削減目標値(現行21年比‐37.5%)を-50%以上に規制強化の方向
- 2035年、40年の中間目標値設定
- ガソリン車新車販売禁止時期の設定
大型車CO2規制
- 2030年CO2目標値(現行20年比‐30%)の引き上げ検討
- バス等の電動化義務付け時期検討
欧州排ガス規制
- 次期欧州排ガス規制(Euro7)の検討・提案(現時点、相当非現実的な提案になってきそう)
代替燃料インフラ指令
- EV充電設備や水素ステーションの設置義務化に関わる法改正の方向
- EU域内で充電設備のバラツキを生じさせないために、全加盟国における強制力のある法規へ改訂
EU排出権取引制度
- これまで規制対象外であった船舶・航空セクターの対象化を検討(主に船舶への対象化が濃厚)
- 各船舶会社に対して、CO2排出量の上限が設定され未達の場合は、他からCO2クレジットを購入するか、罰金を支払うスキームになる
欧州輸送ネットワーク規則(TEN-T)
- 陸海空における輸送モードのシームレス化、デジタル化、自動化の実現に向けて法規改訂
- モーダルシフトへの強化(旅客・貨物の鉄道輸送拡大)
欧州タクソノミー規則
- 環境負荷軽減に資する製品・サービスに対し資金が流入するスキーム作り
- 機関投資家など環境基準を満たした企業への投資が一定割合義務付けなど
このように、いくつか挙げただけでも、あらゆる観点で欧州委員会が同時並行的に各主法規・ルールの改訂を実施している事が分かります。
欧州は実質今週が年末最後の仕事Weekとなります。多くの課題、来年2021年に実施すべき仕事は膨大ですが、コロナでクリスマスマーケットもなく、これまでとは全く違ったクリスマスシーズを経て、来年に突入します。
今後の動きに目が離せません。それではこの辺で。
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