【最新情報】欧州自動車CO2規制: 欧州議会ラポーターの修正案がついに公開

EU CO2 standard (cars/vans)

欧州議会環境委員会(Envi-com)は、12/13、欧州自動車CO2規制の欧州委員会提案に対するラポーター修正案をついに発表2030年のCO2削減目標値として-75%(欧州委員会提案は-55%)を盛り込むなど、軒並み厳しい基準への修正を提案。
今後、このラポーター提案をベースに年明けEnvi-com内での議論が本格化し、2022年の春から夏頃にかけて欧州議会のポジションが固まっていく予定です。
本日はこの内容について解説したいと思います。

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ラポーター修正案がなぜ重要なのか?

まず、ラポーターとは、欧州議会側のポジションを取りまとめる主担当者の人物のことを指し、欧州自動車CO2規制の主担当委員会は、Envi-com(環境委員会)のため、ラポーターもこのEnvi-comから選出されております。
ちなみに、ラポーターは、Renewという政党から選出されたオランダ人のJan Huitema氏(ヤン・フイテマ氏)が任命されています。(詳しく下記記事より参照)

今回出たラポーター修正案は、今後の欧州議会審議を占う意味でも、まさに議論のたたき台(出発点)となるため、非常に重要かつ注目度が高い案件となっていたところ、今回ようやく発表されたという訳なのです。

ラポーター修正案の主なポイント

先ず結論から言うと、以下7点に集約されます。

  • ①CO2削減目標値は、2035年▲100%は据え置いたものの、25年、30年削減目標値は軒並み引き上げ(2030年で▲55% ⇒ ▲75%)
  • ②かつ、2027年の中間目標も新設(▲45%)
  • ZLEVインセンティブは、2025年以降の廃止に伴い、CO2排出量50g/㎞以下の車両の市場導入に対する(CO2 compliance)ボーナスなし
  • PHEVの新UF(Utility Factor)を遅くても2025年から適用 (早急に現行UFを見直し)
  • エコイノベーションの上限値厳格化(2025年以降は現行7gではなく、CO2削減割合に応じて下方修正。つまり2025年で7×0.75₌5.25gのイメージ)
  • 持続可能な代替燃料(sustainable alternative fuels)×ICEの可能性やCN寄与度を中間reviewの中で評価。
  • ⑦WtW、LCA評価については、今回の修正案では一切、触れられていない

これだけ読んでもうまくイメージが付かないと思いますので、分かりやすく一覧表にまとめました。


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ここからは少しポイントを絞って詳しく見ていきます。

①CO2削減目標値は、2035年▲100%は据え置いたものの、25年、30年削減目標値は軒並み引き上げ(2030年で▲55% ⇒ ▲75%)

ここでのポイントは、▲100%の時期が最悪、更に早まる時期(例えば、2033年とか)で設定されるのではとの懸念もありましたがそこは回避されています。
また、2027年の中間目標の新設は、予想通りですが、2030年目標値を75%に置いてきたのはやはり、少し驚きますね。(さすがEnvi-comといったところでしょうか)

これら目標値の設定を見ると、これまでこのブログでも紹介してきた環境NGO(ICCTやT&E)が主張してきた目標値とほぼ似たような感じになっている事が分かります。

個人的な想像ですが、今回、Carsの2030年目標値を▲75%で置いてきているため、最終的なTrialogue(欧州法案を最終的に決めるフェーズで行われる、欧州議会、閣僚理事会、欧州委員会の3者協議の事)での落しどころは、65%前後と推測します。

③ZLEVインセンティブは、2025年以降の廃止に伴い、CO2排出量50g/㎞以下の車両の市場導入に対する(CO2 compliance)ボーナスなし

個人的には、この修正が一番驚いた部分でもあります。
ZLEVインセンティブについては以前もこのブログ内で解説している通り、いわゆるBEV、PHEVを市場に出す代わりに、CO2削減目標値への恩恵(ボーナス特典)を自動車メーカーに付与するというものですが、なんと、、これが2025年以降は廃止という内容。
つまり、2025年以降は、純粋にBEV/PHEVのCO2値を加算していく事になり(BEVはもちろん0gですが)、BEV/PHEVを世に出しても、特にボーナスはあげない。もはや特別な車両ではないと言っているのだと思います。

その他の部分

その他として、④PHEVの新UF(Utility Factor)の件ですが、
いわゆるPHEVのCO2値は実は、認証値よりも実走行時に多くのCO2を出しているというデータが色々な環境NGOから示されているのですが、つまり、現在使用されているUF(充電されたバッテリーでEV走行をしている割合)が高すぎるとの疑念から、欧州委員会は早急にPHEVの実走行CO2データを取得し、このUF見直しに入っているのです。
上述の通り、PHEVへのボーナスは無くす一方、UFも更に厳しくしてCO2値が上がってしまうため、PHEVについてはダブルパンチという事です。

そんな中、唯一BEVの普及以外にも言及している部分はあり、それが、⑥持続可能な代替燃料(sustainable alternative fuels)の導入可能性の部分です。
内燃機関車両(ICE)の販売はあくまでも2035年以降は禁止となりますが、それらICEの脱炭素に寄与できる技術として、sustainable alternative fuelの可能性やカーボンニュートラルへの寄与度を中間reviewの中でしっかり評価するといった文言が盛り込まれています。2025年以降の話にはなりますが、ラポーターもこの部分を完全に無視した訳ではなく、しっかりモニターしていく必要はあるとの認識だったのだと思います。

今後の議会審議スケジュール

今後ですが、今回出たラポーター修正案をベースに来年1/13のENVI-comにて協議を開始し、4/28の同委員会でEnvi-comのポジションを決定すべく投票に持っていく段取りとなります。
ただし、示されているタイムライン通りに物事が進んだ試しはなく、数か月もしくは半年遅れも視野に捉えておくべきだと思います。

以上、またUpdateがありましたらレポートしたいと思います。

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